広隆寺弥勒半跏思惟像

広隆寺弥勒半跏思惟像(こうりゅうじみろくはんかしいぞう)

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この本、私の人生を変えました。「私の人生を変えた10冊」に入ります。

1956年(昭和31)発行のこの本を、私は父の本棚から見つけました。高校3年生のときです。

実はそれまで仏像に対して特別な気持ちがあったわけではありません。むしろ敬遠していたと思います。それは観光業または葬儀屋さんになってしまった仏教への不信感に由来しました。

ふと手に取ったこの本にショックを受けました。仏像に対する偏見が吹っ飛びました。

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1945年(昭和20)8月15日、日本は無条件降伏というかたちで太平洋戦争に敗戦。広島、長崎に原子爆弾を投下され日本中の都市が焦土と化しました。それからわずか約11年後にでた本です。私はその年の8月に生まれました。この本と私は同じころに生まれたわけです。

京都新聞に連載されたシリーズをまとめた本だったそうですが、京都文化の底力を感じます。取り上げられている仏像が一流なら、執筆者も一流。

当時、立命館大学総長だった末川博、立命館大学教授の奈良本辰也、京都大学教授の湯川秀樹・貝塚茂樹、同志社大学総長の大塚節治、京都芸術大学教授の佐和隆研・辻晋堂、画家の池田遙邨・堂本印象、歌舞伎俳優の板東蓑助、歌人の吉井勇、陶芸家の清水六兵衛、京都府知事の蜷川虎三、高山義三京都市長・・・

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この本を飾る仏像の写真のトップがこの広隆寺弥勒半跏思惟像でした。

この本に取り上げられている他の仏像たちの表情も見て、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」やロダンの「考える人」の表情を対比し仏像の方が優れている、東洋の美術・日本の美術を見直さなくてはならないという強引で乱暴な作文を高校3年の美術の時間に作りました。美術の先生からは全く評価されなかったと記憶します。


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1965年(昭和40)第1刷発行。
1975年(昭和50)第37刷発行。
本には佐和隆研先生は京都芸術大学学長、梅原猛先生は京都芸術大学教授となっていますが、私が京都芸術大学に入学した1969年(昭和46)には梅原先生が学長でした。

私はこの本を芸大生のときに入手して、この本で取り上げられているいくつかの仏像を訪ねました。もちろん広隆寺弥勒半跏思惟像も。


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この本に掲載されている広隆寺弥勒半跏思惟像。こんなふうに書かれています。

広隆寺の弥勒菩薩は何を考えていられるのであろう。深く世界と自己を見つめているようなうつむいた眼。明晰な知性を示しているかのようなすじの通った鼻、そして慈悲と喜びにあふれた口もとの微笑。

仏像全体から何ともいわれぬ清涼感と神秘感がただよってきて、多くの人を詩人か哲学者に化すのである。この像の前に立つとき、人は詩人の如く、美しい賛美の言葉をつずやきたくなり、哲学者の如く、永遠の思いにかられるのである。

この像を写真で見たヤスペルスは、この像こそ、世界でもっとも清らかで、もっとも美しい像であるといったそうだ。

以下、インターネット上で拾った画像。

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